前回
生まれて初めての国家試験である宅建士試験。
自己採点の結果、不合格が判定しました。
一発で受かると安心しきってた私からしたら青天の霹靂のような感覚です。
その後は臭い物に蓋をするかのように、問題集テキストを一式、見えない棚奥に封印しました。
それでも、一度手をつけた宅建士への未練というか悔しさの気持ちが拭いきれることなく、合格発表まで悶々とした気持ちで過ごしていました。
完全に切り替えがつかなかった理由として、
「まぐれで受かるかもしれない」という、かすかな期待も残っていたのです。
過去の合格点を見ると、6割の総得点に達していない28点で合格できた回があったからです。
それに、マークミスが数問あって、自己採点より実際の結果の方が得点が高い可能性があるかもしれないだなんて、自分にとって都合が良いIFストーリーを思い浮かべていました。
初めて受験した私は、現実を理解できていない状態でした。
そんな儚い希望もまもなくして藻屑と化しました。
合格発表日、ドキドキしながら、インターネット発表で受験番号を入力したところ、そこには無慈悲な現実が待っていました。
この年の合格ラインは、自分の自己採点よりも遥かに高い数値でした。
圧倒的実力不足で私は、敗北したのです。
過去問一周もやったんだし、もしかしたら6割未満のこの点でも受かるかもしれないという甘ったれた目論見が粉々に瓦解した瞬間です。
ブログやX(旧ツイッター)、掲示板等は、合格に喜ぶ受験生の声で、歓喜の渦と化していました。
自分よりも若い10代後半の学生が一発合格を果たしているのに、
問題集一冊一通り解いたのに、
宅建は国家資格の中では一番簡単なはずなのに……
なんで自分は不合格なんだ。
ふがいない自分、思い通りにいかない現実から、自暴自棄になりそうでした。
この時の私は、
勉強不足
勉強のやり方が間違っている
このシンプルすぎる要因に気づいていませんでした。
独学で井の中の蛙だった私は、自分の努力不足を棚にあげていて、まずどこから軌道修正したら良いのか気づくのに、時間がかかりました。
これまで受検してきた漢検(準1級除く)、秘書検、英検は、過去問を一通り回したやり方で、突破できました。過去問を暗記する勉強法でなんとかなったのです。
しかし、この宅建士試験の場合は、同じようにはいきませんでした。
広大な試験範囲で、聞き慣れない法律用語の羅列を一度や二度見ただけでは、「解ったつもり」止まりだったのです。
事例問題や判例問題等、その場で学んだ知識を応用させて答えさせる出題が増えている宅建士試験です。
なぜそのような解答になるのかを、体系的に理解していなかった自分が太刀打ちできるはすがありませんでした。
その顛末が5割強の得点です。
宅建士試験の中で、受験生に苦手とされている民法においては、壊滅状態でした。
3割くらいの得点率だったと思います。
事前学習の時点で、ちんぷんかんぷんでした。
抵当権や代理、基礎中の基礎である制限行為能力者の内容すら、原理原則を理解に苦しみました。
そもそも根抵当権の正しい読み方すら知らずに、過去問を解いていました。
分からない弱さから目を背けるかのように、過去問をざっと解いた程度で、撤退したのです。
ただなんとなく覚えたつもりになっても、骨格を理解していないのですから、形を変えて出題された時に、まるで初めて目にしたような感覚に陥るのも当然です。
苦手科目の民法が出来なくても、大量得点が可能な宅建業法で挽回すれば総得点で合格できる可能性もあったのですが、その宅建業法科目でさえ、おぼろげな知識で挑んだため、6割強の正当率でした。
何が間違っていたんだ。
初めて受けた宅建士試験の合格発表を終えてしばらく経っても、不合格の要因を理解することができませんでした。
なまじ他資格に合格してきた実績と、四年制の大学を卒業したプライドが邪魔をしていて、「宅建士ごときの試験に落ちるわけがない」という完全に下に見ていた自分が打ち砕かれたわけですが、諦めるわけにはいきませんでした。
不動産業界に就職するため?
行政書士や社労士試験等のステップアップのため?
私の場合は違いました。
はっきり言って宅建士は、必ずしもこれからの人生に必要な資格ではありませんでした。
でも、宅建士に受かることで、これまで大学や高校入試などで一般入試を回避してきたように、ここやり直すかのように自分の何かが変わる気がしたのです。
当時非正規職員として勤務していた人生でしたが、合格によって少しでも自信をつけたいという思いも、根底にありました。
意地にでも合格して、これまで広大な試験範囲から逃げてきた自分を変えてやりたい。
背水の陣によって、新年に入った1月には、再受験を決意しました。
受験のことは、家族と一部の友人にしか話していませんでした。
宅建士試験は、他でもない自分との闘いの連続でした。