- 福祉大を卒業しているのだから、社会福祉士・精神保健福祉士試験に一発合格するのが当たり前ではないか
- 公認心理師試験の合格率48%の数字から難易度を読み解く
- 公認心理師試験と精神保健福祉士試験は合格率が近いから同レベルではないか
福祉大を卒業しているのだから、社会福祉士・精神保健福祉士試験に一発合格するのが当たり前ではないか
10年前、第25回社会福祉士試験前のことですが、某SNS社会福祉士コミュニティで波乱を呼んだ書き込みがありました。
書き込みされた方は、「社会福祉士・精神保健福祉士ともに、初回受験で受からない理由が分からない」と強調しています。
私は、福祉大卒で、社会福祉士・精神保健福祉士の両資格とも1度の受験で合格しています。
私の中ではなぜ福祉大卒で社会福祉士・精神保健福祉士の国家試験に合格していないのか不思議でなりません。
社会福祉士・精神保健福祉士の国家試験って、福祉大学を卒業したら、受験番号と名前だけ記入したら合格・・・・・・という意識しかないんですが、そんなに勉強って必要?って思ってます。
勉強しなくても、ソーシャルワーカーのセンスがあるなら、勉強しなくても問題見ただけで何となくマークシートにマークしたらそれで正解って訳にはいかないんでしょうか……。
「社会福祉士国家試験は、福祉大卒ならば合格するのが当然」と言う前提で問題提起をされています。
それでは実際はどうなのかと言うと、第34回学校別合格者数一覧表を見ても、8割以上の合格者を輩出している学校が8校あるので(いずれも国公立)、この方もそのような上位合格者数の大学を卒業されているのかもしれません。
私がこの書き込みを見て感じたのは、この持論を真に受けて、受験に偏見を持つのは危険であるということです。
その言葉を受けて、「よし!自分は絶対一発合格するぞ!!」とやる気がみなぎってきて、試験本番まで初志貫徹できる自己管理力をお持ちならば私からおかけする言葉はありませんが、
「社会福祉士ってそんなに難しい試験じゃないんだな」という楽観視で、勉強に力を入れずに付け焼刃の知識で挑むことほど危険なスタンスはないと断言できます。
事実として、社会福祉士は福祉大卒なら誰でも一発合格出来るような試験ではありません。
第26回以降も毎年のようにネットでは、
「社福は一度で受かるのが当たり前」
「このレベルで100点以上取れないと真の合格ではない」
という心ない書き込みを目にしますが、既に受験をされている方も実感されているとは思いますが、そんな簡単に受かるような試験ではありません。
10人受けて7人通らない試験です。
誰もが一発合格出来るようなレベルの試験ならば、合格率が毎回30%前後という結果が第21回以降数年も続いてはいないでしょう。
「だって管理人は試験に一発合格してるじゃないの!説得力ないよ!」
というご指摘をしたくなるかもしれませんが、私自身も35日の勉強期間と学習量では、目標にしていた90点以上を出せずに、本番も想像以上に苦戦した上での合格です。
決して楽勝だったとは言い難いからこそ強調しています。
試験内容そのものもそうですが、全150問もの問題量自体こなすのが相当な集中力と忍耐力を要しました。
拙ブログの歴代の合格者の方で、一発合格者の体験談の比率は多年受験者よりも少ないですが、「無勉で簡単に受かった」という声は目にしたことはありません。
実際に社会福祉士国家試験の近年の傾向を見ると、奇問難問のオンパレードで合格点を下げるというよりは、頻出基礎問題で確実に点数が取れるかどうかに赴きが置かれているように感じられます。
この方が指摘しているように、センスで数問解けて、合格してしまうような強運の持ち主もいるとは思います。
ですが、肝心な受験勉強を疎かにして、運と勘を頼りにして本番に挑んでも、6割どころか全科目で1点以上を取ることすら難しいでしょう。
5肢択一かつ数十問以上の二つ選べ問題に対して、合格へ滑り込みセーフを狙う戦略は、リスクが高すぎます。
福祉大卒だからと言って、戦略を立てずに付け焼刃の知識で本試験に臨んで受かるほど、甘い試験ではありません。
私の周りでほとんど勉強せずに受かった方は一人もいませんでした(1月から勉強を始めて諦めていたのに、合格したという同級生が周りにいますが、後から聞いたところ、その方は受験慣れしていて地頭が良かったのに加えて、超短期集中で相当な学習量をこなして詰め込んでいたようです)。
戦略的な取り組みと継続に勝る勉強の王道はありません。
ネットや一部で目や耳にする「社会福祉士は大卒ならば一発合格するのが当たり前」という声は真に受けないようにご注意ください。
次は、合格率の多寡によって、試験難易度は測定できるのかについて解説します。
公認心理師試験の合格率48%の数字から難易度を読み解く
関連国家試験である第5回公認心理師試験はEルート(大学+大学院での指定科目履修)区分は1,389人が受験して1,035人が合格を果たしています。合格率で示すと74.5で約7割になります。
つまり、大学院修了レベルの受験生は、心理学の地盤が固められているわけで、ゼロからのスタートではない分(4年+2年の蓄積)、合格へのアドバンテージは高いとは言えるかもしれません。
そんな事情を抜きに単に合格率だけに目を向けると、あたかも簡単な試験のように見えてくるかもしれません。
念頭に入れなければならないのは、公認心理師試験そのものが心理系大学院試験レベルと同等のカリキュラムや出題が用意されていると言える点です。
カリキュラムで用意されている、心理学基礎、心理検査、医学、教育、児童福祉・老人福祉、更生保護、障害等の幅広い知識の取得を前提とし、公認心理師試験でも読解力や判断力などの応用力が求められているので、決して合格率だけで判断できない特徴があります。
ちなみに、全体の9割を占める社会福祉士や精神保健福祉士等、実務経験ルートの合格率は47.1%です。
この数字を低いと感じるか高いと感じるかは個人差があるとは思います。
大学院ルート(D1,2ルート)では、45.7%と48%ですので、大学院で学ばれてこられた方でも二人に一人は不合格になっています。
公認心理師試験と精神保健福祉士試験は合格率が近いから同レベルではないか
第24回精神保健福祉士試験の合格率が65.6%程度なのに対して、一年前の第4回公認心理師試験は58.6%でたので、合格率だけで比較するとそこまで大差はなく、同じくらいのレベルと判断される方もいるかもしれません。
しかしそれぞれの試験事情に目を向けると、
・公認心理師試験は、実務経験Gルート以外の合格者は約7割以上を占めている
・公認心理師試験は、精神保健福祉士試験のように、一部免除専門科目のみ受験という試験形態はない
・精神保健福祉士試験の合格基準は6割以下でも受かり、公認心理師試験は6割以上の合格点が定められていた
・精神保健福祉士試験は全問題1点設定だが、公認心理師試験は事例問題と択一問題の配点が異なる
カリキュラムの違い以外にもこれだけの特徴が上げられますので、合格率だけでは単純比較できない事情が存在しています。
資格試験の合格率は難易度を測るための目安にはなりますが、それだけは判断できない部分もありますので、これから資格試験を選定される上で、母集団の中身にも注目してみてくださいね。
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