社会福祉士国家試験の合格点は6割に収まるようになりましたが、「あと数点」で悔し涙を飲みながら、再受験を志されている方も少なくはないと思われます。
合格まであと数点という非情な現実を突きつけられてから、気持ちの整理をつけるのにそれなりの時間がかかったかもしれませんが、「今年こそは絶対合格」をスローガンに新しい一歩を踏み出された場合にまずぶつかる壁があります。
それは、
このままの勉強法で貫くべきか、それとも別の問題集や通信教育等を選んだほうが良いのかという二択です。
要するに、前年度の勉強法から新しい勉強法に変える、もしくは追加した方が良いかという悩みですね。
この回答については、様々な考え方や向き不向きもあるので、一概に言いづらい要素がありますが、私自身の経験とこれまでリベンジ合格を果たされた方の声を集約すると、最初は前年度の勉強法をおさらいすることをお勧めしています。
合格点まであと数点ということは、限りなく合格点に近い位置にいるわけで、新しい知識をインプットすることでより合格点が向上するように思えますが、その前に、「合格達成に必要な基礎力(地盤)」を確実に固めることが肝心なのです。
基礎力が蓄積されていれば、本番でどんな問題が待ち構えていても勝利できる絶対合格力を身につけているとになります。
基礎力があいまいなままで、自分の弱点を認める、見つめなおすことは苦痛が伴うかもしれませんが、そのまま新しい問題集に切り替えて、以前の勉強法から脱却することで五里霧中状態に陥るリスクがあります。
第4回公認心理師国家試験を例に取ると、史上初の143点(6割程度超)になりましたが、第5回公認心理師試験では、試験傾向が変化し、それまでの知識量を問う問題から、「知識を前提とし、応用力、瞬発力」を問われるような出題が多数出されました。
いわゆる、「二つまでは絞れるけれども、一つには絞り切れない」という問題です。
過去問や参考書であまり目にしたことがないようなキーワードや、過去問解答レベルではなくて、より細分化した内容が出題されていました。
更に、知識+国語力で読解しなければならないような出題が如実でした。文章量を長文化させて難化を図っていることがうかがえますが、消去法で答えるために国語読解力を頼りにしなければならない問題が登場したのです。
例:問 89
ある実験において、写真に写った本人は左右反転の鏡像をより好み、その友人は同じ人の正像をより好むという結果が得られたとする。この結果を説明する心理学概念として、最も適切なものを1つ選べ。
1 傍観者効果
2 単純接触効果
3 ピグマリオン効果
4 自己中心性バイアス
5 セルフ・ハンデイキャッピング
ちなみに、1の傍観者効果は第30回社会福祉士国家試験で、2の単純接触効果は第33回社会福祉士国家試験で、3のピグマリオン効果は第25回、第30回社会福祉士国家試験でも出題されています。
過去問で培った知識をもとにすると、1と3と5は明らかに誤りであると消去することができます。
4の自己中心性バイアスは自分を基準に他者の心を捉えてしまう現象のことを言いますが、2の単純接触効果は、もともと興味がなかった相手でも、複数回接触することで興味を持つようになるという意味があるので、問題文に照らし合わせると、「違う気がする」となり、正しいものを一つ選べなくなってしまうジレンマに陥ります。
単純接触効果について、固定観念で判断しようとするとふさがってしまいますが、自己中心性バイアスにすると、友人の好みの部分が該当しないからという理由で消去法で選ぶことで正解につながるというプロセスを辿ります。
この傾向は第37回社会福祉士試験、第27回精神保健福祉士試験でも共通する可能性が考えられます。
新カリキュラムに変わることで、合格点や出題形式が大幅に変動する可能性を危惧されている方も多いと思われますが、私は合格点や試験難易度は従来と大差は起きないと想定しております。
合格点を絞るために、いわゆる「奇問・難問」や「見たことがあるけれども、自信をもって答えきれない」出題を多く作成されることは従来通り見込まれて、事例問題の比重が高まる可能性はありますが、大幅な難易度調整は考えにくいです。
※ここで言う大幅な難易度調整とは、第25回試験のような過去最低合格率20%を切るような出題形式難易度に準ずるようなレベルという意味です。
参照
[総出題数についての提言]
○ 新たな福祉ニーズに対応できる実践能力が備わっていることを確認・評価できるよう、タクソノミー分類を踏まえた問題作成を行い、理解力・解釈力・判断力を問うことができる事例問題による出題を充実させることが望ましい。
参照
合格基準は、将来的には難易度補正を行わない絶対基準にすべきとの意見があるが、社会福祉士国家試験は、様々な分野における福祉ニーズを踏まえ出題することから、法律や制度の創設・改正、社会情勢の変化などにより、画一的な出題を行えない特性があるため、絶対基準には馴染まないのではないか。
[合格基準についての提言]
○ 総得点の 60%程度を基準とし、問題の難易度で補正した点数以上を得点した者を合格とする合格基準は、今後も維持することが望ましい。社会福祉士国家試験の今後の在り方について
繰り返しになりますが、どれだけ勉強を重ねても本番は新出問題が必ず登場しており、前年度と同じ問題は見られません。
その代わりに、過去に出題したものが形を変えたものや類似問題がところどころにちりばめられているので、鍛錬を重ねて培った基礎力があれば、振り回されることなく正解の肢を選び抜くことができるのです。
「もう前年度の勉強はやり尽くしたし、これ以上お手上げだよ」と言いたくなるかもしれませんが、広大な科目群を網羅できるようなパーフェクト勉強法というのはなかなか実践しにくいものです。
それに、日に日に以前覚えたことは忘れてしまうものなので、昨日まで覚えていたつもりでも、今日見直してみると忘れてしまっている自分に気づくはずです。
おさらい勉強法はマンネリ気分で成長を感じにくいのでモチベーションが維持しにくいかもしれませんが、そんな地道で単調な作業を繰り返すことが絶対合格道のゴールにつながっています。