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「この人たちの明日を、私は見届けられない」。終わりが決まった福祉職の切なさと、最後まで現場に立つための処方箋。

 

年度末での契約満了(雇い止め)を受け止めている非正規職員の方、あるいはすでに退職を決意し、職場を去る日までのカウントダウンに入っている方に向けた記事です。

一般の企業であれば、「あとは業務マニュアルを作って、適当に引き継いで終わり」と割り切れる方もおられるかもしれません。

しかし、私たちが身を置く福祉や対人援助の現場では、そう簡単に心をシャットダウンすることはできません。

 

なぜなら、私たちが日々向き合い、引き継ごうとしているのは、単なる書類やデータではなく「人の人生や生活そのもの」だからです。

 

終わりが決まっている中で支援を続けることの特殊な苦悩と、最後まで自分をすり減らさずに現場に立つためのマインドセットについて、実体験をもとに今回はお話ししたいと思います。

 

 

支援者としての「割り切れなさ」と「切なさ」


退職日が近づくにつれて、現場の対人援助職を最も苦しめるのは、利用者に対する「割り切れなさ」です。

「この人の明日を、私は最後まで見届けられない」という無力感。

時間をかけてようやく心を開いてくれた利用者や、これから就労や進学といった大きなライフイベントを迎える方を前にして、「自分はもうすぐいなくなる無責任な存在なのではないか」という罪悪感や、「もう二度と関われない」虚無感に苛まれることは珍しくありません。

そして、どれだけ詳細にケース記録を残し、完璧な引き継ぎを行うにしても、自分が肌感覚で築き上げてきた「関係性」や、声のトーンひとつから読み取るような「微細なアセスメント」までは、次の担当者へ完全には引き継げません。

「私が抜けた後、この人は大丈夫だろうか」という強い後ろ髪を引かれる思い。

それは、あなた様がこれまで真摯に目の前の命や生活と向き合ってきたからこそ生まれる、支援者としての真っ当で尊い「切なさ」です。

 

 

逆に手に入る「究極の割り切り」と心の余白


一方で、終わりが決まっているからこそ手に入る、ある種の「特権」もあります。

それは、組織に対する「究極の割り切り」です。

「どうせ年度末にはいなくなる人間だ」と腹を括った瞬間、これまで苦しめていた職場の理不尽なルール、上司の的外れな評価、ドロドロとした人間関係、正社員と異なる扱い、形ばかりの会議の決定事項などが、急に色褪せて見えてきます。

「まあ、自分にはもう関係のない世界の話だ」と、組織の問題と個人の感情を切り離す強力な防波堤ができるのです。

組織のしがらみや顔色をうかがう必要がなくなった残りの期間、「純度100%の支援」に没頭することができます。

余計な忖度をせず、ただ純粋に「目の前の利用者のため」だけに時間とエネルギーを使うことができる。

ある意味で、一番プロフェッショナルとして自由でいられる期間でもあるのです。


終わりが決まった働き方のメリット・デメリット


ここで一度、退職(契約満了)が決まっている状態での働き方について、整理してみましょう。

【デメリット】

  • 喪失感と感情的疲労: 利用者との別れが確定しているため、グリーフワーク(悲嘆のプロセス)に近い精神的な疲労を伴います。

  • 長期的なモチベーションの低下: 支援計画を立てるような業務には、どうしても身が入りにくくなります。

  • 残る職員との温度差: これから先もその職場で働き続ける同僚たちとの間に、どうしても疎外感や見えている景色の違いが生じます。

【メリット】

  • バーンアウトからの脱却: 先の見えない無力感や過労(燃え尽き症候群)に、明確な「終わりの期日」が設定されることで、心が救われます。

  • 「今、ここ」への集中力: 長期的な関わりができない分、「今日、この瞬間の関わり」を最大限に大切にしようという強い集中力が生まれます。

  • 精神的な安全基地: 組織の理不尽に対して、「自分はここから抜け出せる」という事実が最大の精神安定剤になります。


結びに:あなた様の支援は、決して無意味にならない


退職日が近づくと、「最後までいられないのだから、自分がやってきた支援は中途半端で無意味だったのではないか」と自分を責めてしまう方がいます。

しかし、それは違います。

あなた様が関わった期間、利用者が話を聞いてもらって安心できた時間、共に笑い合った瞬間、一緒に課題を乗り越えたという事実は、あなた様が職場を去った後も消えることはありません。

その期間の支援は、正社員、非正規という形態は関係なくて、間違いなく利用者の人生の「土台」として残り続けます。

 

それにこの世界は狭いもので、別の環境に移った先で、また利用者や関係機関の職員と関わることも十分ありえます。

 

最後の最後まで、相手を大切にし続けることで、未来に違う形で還ってくるものなので、ここで終わらない「縁」があるのです。

 

私自身も、そういう縁を感じると、非正規雇用だからパートだからというラベルではなくて、人としてどう向き合ったか、接したのかが肝心だと振り返っています。

 

もし、職場内では誰にも言えないような割り切れない感情や、雇い止めに対するモヤモヤ、利用者への複雑な思いを抱え込んで苦しくなったら、決して一人で抱え込まないでください。

 

当ブログの「駆け込み部屋」は、そうした利害関係のない第三者だからこそ話せる本音を吐き出すための場所です。

 

最後の日、職場のドアを閉めるその瞬間まで、あなた様があなたらしく現場に立ち続けられるよう、心から応援しています。