日に日に、ご自身が抱えていた心の不調や過去の障がいを世間にカミングアウトすることで、「生きるのが楽になった」「新しい人生を築けるようになった」という方の姿が増えているように感じます。
また、そのような方の半生や心の持ち方を知ることで、自分自身の人生を前向きに捉えられるきっかけにつながったという声も耳にします。
今回紹介するのは、国民的人気アイドルグループ『乃木坂46』の元メンバーであり、現在は心理カウンセラーとして活動されている中元日芽香さん(30歳)です。
アイドル時代の葛藤と「適応障害」という診断
乃木坂46に1期生として加入した中元さんは、「ひめたん」の愛称で多くのファンに愛された人気絶頂の中、2017年にアイドルとしての活動を停止しました。
実はこの5年ほど前、アンダーメンバーの頃から、彼女には異変が起きていました。
摂食障害(過食症)を経験したのです。
選抜入りどころか、なかなかアンダーの最後列から前に行けないストレスが、彼女を食べ物に向かわせました。そのせいで体型が変化し、メンバーの中で悪目立ちするようにもなりました。
その後、アンダーのセンターをつとめる頃には過食症はいったん収まります。
しかし、なかなか選抜メンバーには選ばれず、握手会でファンから「次こそは絶対選抜だよ」と声をかけられたとき、「もう期待しないで」と応えてしまうほど、彼女は期待されることに疲弊しきっていました。
そして、ようやく選抜メンバーに上がり、今度は1列目を目指すという時期に、彼女は仕事を楽しめていないボロボロの自分に気づきます。
家から出られない、涙が止まらない、リハーサルに行けない、笑えない、喋れない、伏し目がち……。ついには休業を余儀なくされました。
医師の診断は「適応障害」でした。
立ち上がるきっかけとなったカウンセラーの言葉
そんな彼女の大きな支えとなったのは、カウンセラーからの温かい言葉でした。
「あなたは秀でたものが何もないと言ったけれど、5年間も頑張り続けてきたことがすごいことだと思うよ。誰もができることじゃないんじゃないかな」 「今まで自分が泣けなかったから、代わりに身体が泣いてくれていたんだね。辛かったでしょう。頑張ったね」
心身が回復していくにつれ、中元さんはカウンセリングという仕事に魅力を感じはじめます。そしてカウンセラー養成スクールに入り、ご自身の辛かった経験を生かす道を歩みはじめました。
(※参考:『ありがとう、わたし 乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで』中元日芽香|文藝春秋BOOKS より)
最新の活動:心理カウンセラーとしての現在地
中元さんは『日本推進カウンセラー協会』のメンタルトレーナーおよび心理カウンセラーの資格を取得され、乃木坂46卒業後の2018年にオンライン(SKYPE)カウンセリングサロンを開設。
ビデオチャットというご自身らしいビジネススタイルを確立されました。
その後も継続して学びを深め、2023年春には早稲田大学の人間科学部eスクール健康福祉科学科を卒業。
さらに同年12月には、一般の方から寄せられた悩みに回答する「カウンセリング・エッセイ」として、第2弾書籍『なんでも聴くよ。中元日芽香のお悩みカウンセリングルーム』を刊行されました。
2024年にはご結婚も発表されるなど、現在もオンラインカウンセリングや執筆活動を中心に、公私ともに充実した新しい人生を歩まれています。
支援者として、そして一人の人間としての学び
私自身も現場で心理職として悩みに日々耳を傾けていると、かつての中元さんのように「周囲の期待に応えようとして無理をしてしまう」姿に出会うことも少なくありません。
ご自身の痛みを優しく包み込み、専門的な学びを経てクライエントに寄り添う彼女の姿勢からは、支援者として、そして一人の人間として学ぶべき点が非常に多くあります。
挫折を乗り越え、ご自身の弱さを強みに変えて新しい道を歩まれている中元さん。
セカンドキャリアに踏み切れない方や、今の環境で立ち止まってしまった方にとって、彼女の軌跡は背中を押してくれる温かいメッセージになるのではないでしょうか。
