梅雨入りを迎え、気温と気圧の乱高下に心身が振り回されやすい季節となりました。
4月の新年度スタートから約2ヶ月半。
張り詰めていた糸が少しずつ緩み、どっと疲れが出始めている方も少なくないのではないでしょうか。
今年度から複数の現場を行き来し、心理職としての役割を担う日々を送る中で、私自身も少しずつ蓄積した疲労を感じています。
先日、ストレスケアの講義を担当した際も、参加された方々からはこぞって「とにかくストレスが溜まりまくっている」という切実な声がこだましていました。
弱音を吐ける場所がなかったり、周囲に理解者がいなかったり。
そんな悶々とした思いを抱えながら、今日も重い足取りで出勤されている方が、きっとたくさんいらっしゃるのだと思います。
職場の「陰と陽」:太陽の眩しさに霞む人たち
「陰陽」という言葉があるように、職場という組織は本来、それぞれの特性や役割の違いを理解し、歯車のように噛み合って機能していくものです。
人間関係においても、場を引っ張る「太陽」のように存在感が強い人もいれば、縁の下の力持ちとして人知れず黙々と業務を支える「陰」のような人もいます。

多様な経歴や価値観を持つ人が集まり、それぞれの持ち味を発揮できる環境が理想ですが、現実にはそこまで成熟した職場ばかりではありません。
以前、ある元同僚(Bさん)と再会し、職場の「やりにくさ」について生の声を聞く機会がありました。
彼女の悩みは、まさに「新しく来た存在感の強い人(Aさん)が眩しすぎて、自分の存在が霞んでしまい、肩身の狭い思いをしている」というものでした。
圧倒的な自己主張の前に失われる「自己効力感」
Aさんはこの4月に他部署から異動してきたばかりですが、自分のスタンスに絶対の自信を持っており、まるで職場を改革するかのように、次々と自分の持ち味を発揮しているそうです。
対するBさんは、その職場に10年以上勤めるベテラン。
しかし、Aさんの快進撃によって長年培われてきた職場の文化や空気感が急激に変わっていくのを肌で感じ、大きく自己効力感を喪失していました。
Aさんは、Bさんの仕事ぶりを直接批判するわけではありません。
ただ、あまりにも「自分らしさ」を前面に押し出し続けるため、自己主張が控えめなBさんは、その巨大な存在感に完全に飲み込まれてしまっている状態でした。

上司は、Aさんのような「バリバリ動いて成果を出す明確なタイプ」を肯定的に評価しています。
職場全体として目立ったトラブルも起きていないため、Bさんは自分の思いを誰にも伝えられず、「ただ自分の感情を押し殺し、淡々とやり過ごすしかない」と諦め顔で漏らしていました。
「太陽」だけでは、組織の生態系は崩れてしまう
この話をお聴きになって、皆さんはどう感じられたでしょうか。
「うちの職場にも似た職員がいる」と共感された方もいれば、「自分はAさんのタイプかもしれない」とハッとされた方もいるかもしれません。
福祉や教育といった対人援助の現場において、「この働き方が絶対の正解」というものはありません。
Aさんのように個人の能力を遺憾なく発揮し、グイグイと組織を牽引する力は評価をされやすく、結果を求められる際にはわかりやすいです。
しかし同時に、Bさんのように感受性が豊かで、全体を俯瞰しながら「当たり障りなく、しかし確実に」日常の業務を回し続ける人の存在がなければ、組織の足元は脆くも崩れ去ってしまいます。
もし職場がAさんのような「太陽タイプ」ばかりになってしまえば、日陰で咲く植物が枯れてしまうように、「陰タイプ」の人間にとっては居心地が悪く、やがてそこを離れたくなってしまうでしょう。
人間が人間を相手にするこの業界には、そう簡単には片付けられない複雑な問題が山積みであると、改めて考えさせられる話でした。
今、Bさんのように職場の太陽に圧倒され、人知れず影で苦しんでいる方へ。
あなた様のその「目立たないけれど、確実な支え」を必要としている人は、必ずいます。私もそのような存在の一人です。
どうか、ご自身の価値まで見失わないでくださいね。