私が準1級受検を決意したのは、2級合格から約半年の月日が経った後のことでした。
そう、私はあれから一か月の勉強の末、漢検2級に合格を果たすことができたのです。
私にとって生まれて初めて継続的に学習して結果を残せた漢検2級は、その後の資格取得のターニングポイントとなりました。
2級に合格した直後に、「このままの勢いで準1級もチャレンジするか!」 と、意気揚々と書店に赴き、実際に準1級の問題集に目を通してみていました。
結果的に、酔いが醒めて、軽い頭痛が生じたことを鮮明に覚えています。
一番簡単なはずの1問目の読み問題にトライしてみましたが、十中八九何て読むのかさっぱりわからないのです。
30問中、「鯖」や「檸檬」など、日常生活で見覚えのある漢字のみがかろうじて正解していただけでした。
表外漢字や、文章の読み書きとりなど、2級にはない形式が出題されていて、軽いノリで受けられるほど、甘くない現実を突き付けられました。
このレベルで200点中160点(8割)取らないと合格できない現実は、異次元のように思えました。
見てはならぬ世界を垣間見てしまったようで、気分が悪くなり、問題集を閉じて書店を後にしました。
高校時代に2級を余裕で合格した同級生が、その後準1級にチャレンジして、
「2級と準1級は次元が違う」
と言っていたあの言葉を、まさに身をもって実感したわけです。
大学4年次の夏には教育実習があったり、アルバイトに勤しんでいたり、卒論に着手し始めたりして、日常に追われるまま漢検の世界からはすっかり遠ざかっていました。
秋になり、卒論に本腰を入れ始めた時期に、漢検準1級受検を決意したある出来事に遭遇しました。
◆ 真夜中に起きた山奥での「九死に一生」体験から
大学4年次の9月上旬の夜半、高校時代の友達と、地元にある山頂に向かうドライブの最中の出来事でした。
私は一面に広がる闇に目を向けながら、友達が運転していた車の助手席に座っていました。
ハンドルを握っている友達に対して、気がつけばいつものように、
「大学生活ってなんだったんだろうね」と、ぼやいていました。
大学生活も残り半年で、これまでの大学生活を振り返った時に、「何か一つ形として残せたものがあったのだろうか」という虚しさが怒涛のように押し寄せてきたのです。
必要な単位を取得して、アルバイトで小遣いを稼いで、淡々と日々を過ごしている積み重ねで、気がつけば22歳を目前にしていて、社会に進出しなければならない猶予満了が近付いていました。
私はこれまでを振り返っても、大学生活が充実しているとは、心から思えなかったのです。
大学には、心を通わせられる友達はいませんでした。
高校時代の友人も、同じく大学生活を思うように過ごせておらず、友達と呼べる存在もいないことで、孤独や虚しさを共感し合える仲だったのです。
静寂の後、友達は重い口調で、
「できることなら大学辞めたいけど、もうここまで来たら辞められない。明日からまた大学に行かなければならないと思うと本当に気が重いよ」
と、ため息が混じりながら答えていました。
大学に居場所を感じていなかった私も、溜め息が何度も出るほどに同感でした。
街灯がほとんどない暗闇の道を走っていたため、まるで自分達の未来を暗示しているかのような錯覚に浸っていました。
このままどっか遠くに行ってしまいたい。
現実逃避の気持ちも生じていました。
車内では、重い沈黙が続き、気がつけばまた、2年前のあの言葉が頭の中で木霊しました。