『だから、自分をあきらめるな!』 加藤秀視著
「今がどんなにつらくても、消せない過去があっても、人は必ず変われる。」
著者の加藤さんは、栃木県出身の株式会社創栄Group代表取締役、株式会社新明建設会長です。
自身の経験をもとに、28歳から、全国各地の中学校、矯正施設、養護学校、家庭訪問、いたるところで少年更生を行っています。
その功績が認められて、2009年には、日本青年会議所主催の「人間力対象」準グランプリ、文部科学大臣奨励賞、衆議院議長奨励賞も受賞。
幼少時代から酒乱の父親による虐待(暴力)を多々受けてきて、家庭の孤独から、小学校へはくわえタバコで学校に通い、中学校はバイクで通い暴走族に入団。
父親の虐待から逃れるために、児童養護施設で過ごす経験も持ちます。
県内でも有数の不良ばかりが集まることで名高い高校へなんとか、入学するものの、遅刻や無断欠席、喧嘩などで、わずか一学期で退学。
その後は、暴走族のトップから、裏社会へと移り、喧嘩と暴走行為にあけくれる日々を過ごしていました。
22歳に、2度目の逮捕をきっかけに起業して、その後友人の死をきっかけに、裏社会と決別する。
26歳になると、暴力と権力で成り上がるという信念に疑問を持つようになります。
一緒につるんでいた仲間や社員が、殺人罪、暴行事件、薬物所持で逮捕される、突然加藤さんの前から逃亡する、事故死するなどが立て続いておきて、心身ともに激しいストレスから異変が起きるようになり、実家に2年半ほど引きこもるようになります。
起死回生のきっかけになったのは、友人からもらった一枚のCD。
感銘を受けた加藤さんは、意を決して、案内に書かれていた研修に足を運びます。
そこから、人生が好転し始めました。
本書は、人生どん底で、取り返しがつかない過去を送ってきた若者が更生していく過程が描かれていると同時に、介護、更生保護などに興味がある社会福祉士受験生のお役に立てる作品にもなっています。
『この顔でよかった』 藤井輝明著
2歳の頃から、顔に「海綿状血管腫」というアザが現れ、右目の周りから、右頬にかけて膨らんでいる藤井輝明さん。
藤井さんは、もって生まれた障害を悲観的に捉えることなく、むしろ障害があるからこそ分かったこと、学んだことを人生の糧にして自己実現を果たされてきました。
本書は、何らかの悩みやコンプレックスを抱えているみなさんに対して、自分の弱いところを含めて、自分を丸ごと受け入れて前向きに生きていくことの大切さを、実体験から説いています。
「いくら成績がよくたってバケモノは雇えない」と、50社から不採用を突きつけられたきた藤井さん。
就職活動だけではなく、「容貌障害」のために苛酷ないじめにあってきましたが、「この顔がチャームポイント」と考えるようになったとき、人生が明るいものに変化したそうです。
学校や社会でのいじめが深刻化する中、大切な人生の教訓を教えてくれています。
藤井さんの学歴を見てみると、
桐朋学園小学校、桐朋中・高校、千葉県立衛生短期大学、中央大学経済学部、筑波大学大学院体育研究科修士課程修了、名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了
といった、ずらりと並んだ高学歴の持ち主でもあります。
加えて、医学博士、看護師、行政書士の資格も取得しておられます。
なぜそこまで学ぶことに力を入れたのか、その答えは本書に書かれていますが、学歴の大切さを教えてくれた母親の存在の大きさが影響しているそうです。
諦めない大切さや、絶望から這い上がるためのヒントだけでなく、福祉や命について考える作品になっています。