過去16年間の法律系国家資格(宅建士試験、行政書士試験、社労士試験)の試験傾向を見ていて、つくづく感じることですが、過去問をただ丸暗記しただけでは、合格できないレベルになってきているということです。
平成18年以降に試験改正してから難化傾向になった行政書士試験。
平成21年から実務に伴ったような応用力が求められるように変わった宅建士試験。
平成25年に合格率5.4%という最低水準を記録した社労士試験。
近年合格点が6割水準圏内になってきている相対評価の社会福祉士試験を見てもそう感じています。
行政書士試験では、受験勉強で得た知識をベースに、問題の主旨に沿って的確に使い分けることができるか、文章から登場人物の関係図をイメージして、解答を導き出せるのかを求められているような出題がベースとなっていました。
人によっては、法的思考と解釈している方もいらっしゃいますが、思考型の問題が軸となっていました。
行政書士試験は、3時間という限られた時間の中、記述式を含めた全60問を忍耐強く解くことが求められています。
社会福祉士試験が全150問あるだけに(午前・午後で分かれますが)、60問という数字だけを見ると、「180分もあれば、なんとか解けるのではないか」と思われるかもしれませんが、行政書士試験は、近年の社会福祉士試験のように問題文と選択肢一つ一つが長文化しているという点が共通しています。
近年の宅建、行政書士、社会福祉士国家試験のどれを並べてみても、過去問をただ闇雲に詰め込んだだけでは、合格ライン突破のためには大変厳しくなっています。
例えば宅建試験も受験生の質によって合格ラインが上下する相対評価なのですが、平成22年と23年は「2年連続7割以上を取らないと受からない」という高水準であった軌跡を見ても、基礎力を身に付けていることが当然であるようになっています。
資格取得者数が潤っており、社会から求められる水準が高くなっていることもあげられますね。
社会福祉士試験では、過去問から言い回しを変えたような類似問題が出題された時に、短時間で冷静に解答できる瞬発力、判断力が求められます。そして、運の力も影響します。
ランダムに出題される行政書士試験の一般知識問題は、この運によって、合否が左右されると言われていますが、社会福祉士試験においても、「なんでこんな問題が出るの」「そんなの聞いたことがないよ」というような初見問題が必ず出されます。
そんな近年の試験に合格するためには、基礎力を確実に身につけていることが必須で、「なぜそのようになるのか」を理解していて、実際にその知識をどう活かせるのかの知恵を発揮できるかどうかが要です。
私と同じ第24回試験で初受験したFさんは、120点もの高得点を出し一発合格を果たされました。
この年の合格点は81点で、合格率は26.3%です。
福祉の経験は皆無で、異なる業種で仕事をしてきたので、スタート時点で福祉の知識は「0」どころか「マイナス」からだったと振り返られています。
テキストを読んでもわからないことの連続で、たまに知っている言葉をみつけると嬉しいレベルだったそうです。
そんなFさんが本番で120点もの高得点を残された背景には、圧倒的過去問学習が下地になっていたようです。
Fさんは机に座ってノートをとるといった勉強スタイルは苦手なようで、どこに行くにも過去問を常に持ち歩き、クイズ感覚でバスの待ち時間や湯船につかる時間などすき間を利用してひたすら解いたそうです。
試験までに過去5年分を合計25回以上も解いたそうです。
これは、第25回試験(合格点72点)で110点以上の高得点を出された方や、第30回試験で120点以上という報告をくださった一部の合格者からも共通して「過去問を10回転以上こなした」という声が上がっているので、伊達ではありません。
Fさんは過去問の取り組み方について下記のように述べています。
「解説部分まで頭に浮かぶようにする」
問題を解く(正解の番号が分かる)だけでは勉強にはならず、「解説部分まで全部頭に浮かんでくる」ことがその目的です。
例えると、1つの問題で得た知識が1つのブロックとなり、それを組み建てていくと「社会福祉士」という大きな家が建つイメージです。そして過去問だけでは得られない知識(ブロックとブロックのすき間)を、テキストなり『ワークブック』なりで埋めていきます。
社会福祉士になりたい 私はこうして合格しました!(第43回) FISHさん|介護・福祉のけあサポ
20%以下の合格率に収まる国家試験に共通していますが、単に過去問を丸暗記さえすれば受かるのなら、そのような低水準に収まるはずがありません。
本番に過去問をそのままコピーした出題はまず出ませんし、楽して受かろうとする受験生を振り落するような構成になっています。