社会福祉士・精神保健福祉士本試験までカウントダウンを切った今、過去問の傾向をベースに本試験で通用できるテクニックやアドバイスを、紹介していきます。
言うまでもなく、社会福祉士・精神保健福祉士試験は長期戦が想定されており、一問の解答目安は1分30秒というわずかな時間になっています。
初見問題や一つに絞りきれない問題に出くわした時、問題文を読まなくても、選択肢を比較するだけで、解けてしまうテクニックを頭に入れておくことで窮地を脱することができるかもしれません。
出題者の意図をくみ取ることが出来て、正誤の表現を選別できれば、正解を導き出せる問題もあるのです。
近年の社会福祉士国家試験における5肢を一つ一つ分析して行くと、
「~すること(場合)もある」という、「含みをもたせる」選択肢や「〜することができる」は正解率が高いです。
第32回社会福祉士試験より
権利擁護と成年後見制度
問題 80 成年後見制度に関する次の記述のうち,適切なものを 1 つ選びなさい。
1 子が自分を成年後見人候補者として,親に対する後見開始の審判を申し立てた後,家庭裁判所から第三者を成年後見人とする意向が示された場合,審判前であれば,家庭裁判所の許可がなくても,その子は申立てを取り下げることができる。
2 財産上の利益を不当に得る目的での取引の被害を受けるおそれのある高齢者について,被害を防止するため,市町村長はその高齢者のために後見開始の審判の請求をすることができる。
3 成年被後見人である責任無能力者が他人に損害を加えた場合,その者の成年後見人は,法定の監督義務者に準ずるような場合であっても,被害者に対する損害賠償責任を負わない。
4 判断能力が低下した状況で自己所有の土地を安価で売却してしまった高齢者のため,その後に後見開始の審判を申し立てて成年後見人が選任された場合,行為能力の制限を理由に,その成年後見人はこの土地の売買契約を取り消すことができる。
5 浪費者が有する財産を保全するため,保佐開始の審判を経て保佐人を付することができる。
正解2
児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
問題 142 児童相談所の設置及び業務に関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 都道府県及び政令指定都市・中核市は,児童相談所を設置しなければならない。
2 児童相談所長が行う一時保護は,保護者の同意なく 1 か月を超えてはならない。
3 児童相談所長は,児童本人の意に反して一時保護を行うことはできない。
4 児童相談所長は,児童等の親権者に係る民法の規定による親権喪失の審判の請求を行うことができる。
5 管理栄養士の配置又はこれに準ずる措置を行うものとする。
正解4
※「請求をすることができる」系が2連続正解でした。
更生保護制度
問題 148 更生緊急保護に関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 対象となる者からの申出がない場合は職権で行うことができる。
2 対象となる者に仮釈放中の者を含む。
3 対象となる者が刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束を解かれた後 2 年を超えない範囲内において行われる。
4 刑事施設の長又は検察官がその必要があると認めたときに限って行われる。
5 更生保護事業を営む者に委託して行うことができる。
正解5
他には、
拒絶・否定系フレーズ 「~してはいけない」
断言・限定フレーズ 「必ず(絶対)~である」「〜してください」
責任放棄・他力本願フレーズ 「任せる」
これらのフレーズも、不正解率が高いです。
人体の構造と機能及び疾病
問題 7 近年のリハビリテーションに関する次の記述のうち,適切なものを 1 つ選
びなさい。
1 がんは,リハビリテーションの対象とはならない。
2 内部障害は,リハビリテーションの対象とはならない。
3 脳卒中のリハビリテーションは,急性期,回復期,生活期(維持期)に分けられる。
4 リハビリテーションは,機能回復訓練に限定される。
5 リハビリテーションを担う職種には,言語聴覚士は含まれない。
正解3
相談援助の理論と方法
問題 105 事例を読んで,エイズ治療拠点病院のL医療ソーシャルワーカーの,この
段階における応答として,適切なものを 2 つ選びなさい。
〔事 例〕
3 か月前にエイズ脳症でパートナーのMさんを看取ったAさん(50 歳)が,L医
療ソーシャルワーカーの下を訪れた。L医療ソーシャルワーカーは,「もう生きて
いけない」と悲しんでいたAさんを,Mさんの他界後も支援してきた。この日,面
接室でAさんは,「Mが亡くなってからは毎日Mのことを思い出して泣き,しばら
くは夢を見ているようでした。今も悲しい気持ちに変わりありませんが,最近現実
を直視できるようになってきました。これからは,一人で暮らしていけると思いま
す」と話した。
1 「よくMさんを支え続けていらっしゃいましたね」
2 「お一人で生活していけるというお気持ちは,きっと一時的なものですね」
3 「面接室でお目に掛かることもこの先ないかと思うとお別れが寂しいですね」
4 「今後のことで相談が必要となるようなことがありましたらご連絡ください」
5 「パートナーと死別した方のグループに入会しましょう」
正解1と4
ちなみに、この点は社会福祉士国家試験だけではなくて、大学入試の現代文や、公認心理師試験、精神保健福祉士試験においても共通しています。
私自身が社会福祉士試験の後に受験した精神保健福祉士試験やメンタルヘルス・マネジメント検定において、時間短縮のために事例文に目を通さずに、選択肢同士で比較して解答を導き出すという方法を選んで正解が重なった経験もあります。
第34回社会福祉士試験より
第34回社会福祉士試験専門科目問95については、事例文に一切目を通さずに、選択肢のみで解答を導き出せました。
問題 95 事例を読んで,Y病院のC医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)が行う介
入レベルごとのソーシャルワーク実践として,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
〔事 例〕
Q政令指定都市の拠点病院であるY病院には,患者サポートセンターがあり,そ
こには複数の社会福祉士が配置されている。患者サポートセンターでは,ここ数年,
身寄りのない患者の退院支援に取り組んできたが,その数は増加傾向にある。そこ
でC医療ソーシャルワーカーは,増加傾向にあるこうした患者に対する総合的かつ
包括的な援助活動や,支援体制の構築に向けた活動を行うこととした。
1 ミクロレベルの介入として,民生委員児童委員協議会に,身寄りのない患者が増
加している問題を訴える。
2 ミクロレベルの介入として,Q市と福祉事務所との総合的な連携の在り方につい
て協議する。
3 メゾレベルの介入として,身寄りのない患者との詳細なアセスメント面接を行う。
4 メゾレベルの介入として,病院内に対策検討委員会を設置することを提案する。
5 メゾレベルの介入として,退院の際,個別に日常生活自立支援事業の活用を提案
する。
解答のポイントですが、まず、「ミクロレベル」「メゾレベル」というキーワードには一切目をくれませんでした。
この語句を知っているかどうかで判断するのではなくて、語尾の言葉で判断を決めたというところがあります。
1.訴える
2.協議する
3.行う
4.提案する
5.提案する
前述したように、SWの役割を念頭に選別すると、「行う」「協議する」「提案する」のキーワードがしっくりきます。
3の行うは、「詳細なアセスメントを行う」とあり、SWとしての役割としてどうか、単独支援目線だと引っかかったため、除外。
2は、連携のあり方について協議とあり、「連携を行う」ならば有力候補にあげられたものの、協議を行う必要性が他の選択肢と比較して低かったため除外。
4と5でどう絞り出すかについてですが、5は「退院の際に個別」という文言で、単独支援だと感じたため、除外しました。日常生活自立支援事業を知っているかどうかで判断していません。
4は医療ソーシャルワーカー単独の支援ではなくて、委員会を設置することを提案して多職種で検討できるようになるからと「4」を選びました。
解答後に問題文を見ると、「総合的かつ包括的な援助活動や,支援体制の構築に向けた活動」と書かれており、この出題の意図に沿うのが4が最も適切だと改めて実感した次第です。
第35回社会福祉士試験より
最新の第35回試験では、「確認する」「努める」というニュアンスのキーワードが正答に使われていました。
従来のような「提案する」「助言する」という、SWに求められる典型的な対応・役割的フレーズの正答率が低くなっている印象でした。
相談援助の理論と方法
問題 98 事例を読んで,R市子ども福祉課の社会福祉士が行う,家族システムの視
点に基づいた今後の対応として,適切なものを 2 つ選びなさい。
〔事 例〕
Jさん(15 歳)は,小学 6 年生の時に父親を交通事故で亡くした後,母親(37 歳)
と母方の祖母(58 歳)の 3 人で暮らしている。母親は,朝から夜中まで働いている
ため,家事全般は祖母が担っている。Jさんは,中学生になった頃から,祖母へ暴
言を吐くようになり,最近は家の中で暴れたり,家に帰ってこなかったりするよう
になった。祖母は途方に暮れ,友人でもある近所の民生委員・児童委員に相談する
と,R市子ども福祉課の相談窓口を紹介され,来所につながった。
1 祖母に思春期の子への対応方法を学習する機会を提供する。
2 家族の凝集性の高さが問題であるため,母親に祖母との距離を置くよう求める。
3 家族関係を理解するため, 3 人の互いへの思いを尋ねていく。
4 家族システムを開放するため,Jさんの一時的別居を提案していく。
5 家族の規範を再確認するため,それぞれの役割について話し合う機会を設ける。
正解 3と5
児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
問題 136 事例を読んで,V里親養育包括支援(フォスタリング)機関のD相談員(社
会福祉士)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
〔事 例〕
Vフォスタリング機関のソーシャルワーカーであるD相談員は,養育里親である
Eさん夫婦からFさん( 9 歳)の相談を受けた。Eさん夫婦はFさんの養育里親委託
を受け, 5 年になる。このところ,Fさんが実親のことを詳しく知りたいと言い出
し,どうしたらよいか悩んでいると話す。Eさん夫婦は,実親のことを知ることで,
自分たちとの関係が不安定になるのではないかと危惧しているとD相談員に話した。
1 Fさんは思春期に入る前なので,今は伝えない方がよいと助言する。
2 Fさんの最善の利益を考え,Fさんに実親のことをどのように伝えるかについて
相談する。
3 Eさん夫婦が自分たちを追い詰めないことを優先する必要があり,実親の話題が
出たら話を変えてみることを提案する。
4 D相談員からFさんに,実親のことを知らない方がFさんのためだと伝えること
を提案する。
5 実親についての全ての情報を,Fさんに直ちに伝えなければならないと助言する。
正解2
当事者の主体性や尊厳を重視するような選択肢の正答率が増えている印象で、お節介的な提案や助言は不正解である可能性が高いです。
「誰が」支援すべき当事者なのかを問うている出題が目立ちました。
問題 94の事例文はまさに、そのような視点から正答を導き出すことができます。
相談援助の基盤と専門職
問94 事例を読んで,Z障害者支援施設のF生活支援員(社会福祉士)がこの時点
で行う支援方針の見直しに関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさ
い。
〔事 例〕
知的障害のあるGさん(35 歳)は,日頃から言語的コミュニケーションは難しい
ところがあるが,Z障害者支援施設から離れた場所にある生家に一時外泊を行った。
Gさんが施設に戻った際に,Gさんの家族から,外泊中の様子を伝えられた。自分
から気に入った場所に遊びに出掛けたり,簡単な食事は自分で用意したりしていた
とのことであった。F生活支援員にとっては,施設ではこれまで見掛けたことのな
かったGさんの様子であった。
1 Gさんの支援は,施設と自宅では環境が異なるため,施設の事情や制約に合わせ
た支援を行うことを再確認する。
2 Gさんの施設での生活では,職員が考えるGさんの最善の利益に関する事柄を優
先的に取り入れる。
3 Gさんの興味が広がるよう,Gさんの理解力や意思決定の力を考慮して,思いや
選好を確認するよう努める。
4 家族から聞いた話を基に,Gさんの支援に,自立に向けたプログラムとして施設
内で実施している料理教室への参加を組み入れる。
5 Gさんの短期的な支援目標を,施設に近接する共同生活援助(グループホーム)へ
の移行に改める。
正解 3
ただし、全ての選択肢がこのような視点で導き出せるものでもありませんので、受験勉強時において、「正しい型」をしっかりとインプットして、本試験で見抜ける力を養うことも重要です。
残り時間が短い場面や、2つまで絞れたものの一つに決めかねる際に、この視点を持っていると絞りやすくなるかもしれません。