他人に振り回されてへとへとになったとき読む本―今までの関係をシャッフルするヒント
社会福祉士や精神保健福祉士は対象者が生身の人間なので、コミュニケーション能力や援助技術というものを意識する場面が多い職種でもあるでしょう。
自分はこれだけ頑張っているのに、満たされない不足感や心の空洞を感じずにはいられない。
なんでこんなに無力な存在なんだろうという自己卑下感が拭えない。
他人と接する中で、自分の至らなさを痛感している方も少なくはないでしょうが、もし「努力が報われない自分」に常にとらわれて気力がダウンしているとしたら、今回お話しするコンプレックスが一因になっているかもしれません。
人を救い、人を助けることで自分の気持ちを納得させ、「人を助ける自分」でしか自分の価値はないと感じて、自分を捨てて過剰に人の世話をして尽くすることを、
愛されたいという願望を、尽くしすぎることで紛らわしているという心理です。
他人に振り回されてへとへとになったとき読む本―今までの関係をシャッフルするヒントのP81より
自分が救われたいために、相手に尽くし続けるとどうなるのか。
自分の心が限界を迎えて、相手との関係が破たんします。
自分の心に無理が生じてパンクしますし、相手もその思いが重いと受け取られて、息苦しくなるからです。
私自身も仕事以外の恋愛・友人関係で幾度となくそのような体験を重ねています。
悩みの渦中に陥っている時、「過去と他人は変えられない」ことを頭で分かっていても、自然の摂理に逆らうように、膨大なエネルギーを費やしてしまうものです。
これだけ頑張っているのだから相手は変わるはずだ。
こちらの計画通りに進むはずだ。
「自分が尽くせば相手が認めてくれて、その結果自己評価が高まる」という視点に捕らわれる続けると、 心はどんどん荒んでいく危険性が高くなります。
人の気持ちは思うようにならないもので、期待値が高いほど適わなかった時の反動が大きいからです。
「尽くしている自分」の在り方や是非については、育ってきた環境や価値観によって形成されている部分もあるので、一朝一夕で変えられるような話ではないという見方もあります。
ですが尽くす自分で接していると上手くいかないと感じているのは他でもない自分自身のはずです。
福祉職は対象者個々人に合わせた包括的な支援が必要不可欠です。
そして、自分一人のやり方で結果を出そうとすると壁にぶつかりやすい職業でもあります。
個の限界を意識しながら、一人で抱えずに、チームアプローチや他のセッション、必要な機関との連携がキーワードになるでしょう。
対象者だけではなくて、支援者自身も一人で頑張りすぎないで、SOSのサインを発することが出来る能力こそ大切になってくると私は思います。
その取り組みは、自己肯定感や自尊心を満たすために行っているのか、それとも相手の利益を第一に支援しているのか、他人に振り回されて疲れ果てていたら、メサイアコンプレックスの存在を意識してみると新たな発見があるかもしれません。