今回は、更生保護施設で活躍する社会福祉士の役割と現状についてまとめました。
第29回試験範囲にも関係しているだけではなくて、今後該当機関での就業を検討されている方のお役に立てれば幸いです。
法務省所管の矯正機関
1.刑務所
2.少年院
3.保護観察所
都道府県が実施主体の機関
4.地域生活定着支援センター
1.刑務所
歴史
社会福祉士は刑務所から出所する高齢者や障害者の社会復帰支援を行います。
2004年度から一部の刑務所から始まり、2009年度から全刑務所に拡大しました。
雇用形態は週3程度の出勤で時間給、年単位契約の非常勤職員でしたが、2014年度より「福祉専門官」という常勤職員の新たな職種が設けられました。以下の12庁に配属されています(2014年度時点)。
刑務所
札幌、宮城、府中、名古屋、大阪、広島、高松、福岡
八王子、岡崎、大阪、北九州
高齢受刑者らの多い12庁に3年の任期で1人ずつ配置し、困難ケースを担当しています。
出所後の再犯を防ぐことが狙いです。
出所後の再犯を防ぐことが狙いです。
今後10年以内に全国計78カ所の施設での配置を目指しており、自立困難な受刑者の支援体制を強化し、再犯防止につなげます。
今後の動向
法務省は、全刑務所への拡充とともに、常勤職員の配置を推進しています。
法務省は、全刑務所への拡充とともに、常勤職員の配置を推進しています。
出所前の生活指導などに限界もあることから出所後に福祉支援が受けられないことも少なくなく、社会復帰が妨げられ結果として再び犯罪を起こす高齢者もいます。
法務省は「今後も認知症などを発症した高齢受刑者や、知的・精神障害を抱えた受刑者が増加することが予想される」(矯正局)と見立てており、出所後の適切な受け入れ先の確保が再犯防止に有効と判断し、刑務所などの刑事施設で社会福祉士や精神保健福祉士の常勤体制の確立を急ぐ方向です。
社会福祉士を増員する政治的背景
政府は2012年7月、再犯防止に向けた数値目標を初めて掲げ、「出所後2年以内に再び刑務所に入る人の割合(20.5%)を今後10年間で2割以上減らす」としました。
また、2013年12月には、「世界一安全な日本」創造戦略を閣議決定。
20年の東京五輪開催に向けた治安対策の観点から、高齢者や障害者の再犯防止策も盛り込んでいることが影響しています。
更に詳しく知りたい方は
2.少年院
国家公務員の一般職の身分になります。
採用条件(平成28年度採用関東地方募集要項より)
(1) 医療観察制度の対象となる精神障害者の円滑な社会復帰に関心と熱意を有すること。
(2) ア 精神保健福祉士の資格を有すること,又は,
(3) 精神保健福祉に関する業務において8年以上の実務経験を有すること。
(4) 大学卒業以上の学歴を有すること,又は大学を卒業した者と同等と認められる資格を有すること。
この場合において,「大学を卒業した者と同等
社会復帰調整官と保護観察官の違いは
社会復帰調整官
根拠法
心身喪失者等医療観察法
主な対象者
仕事内容
生活環境の調査、生活環境の調整(退院地の選定・確保のための調整、退院地での処遇実施体制の整備)、処遇実施計画の作成及び見直し、精神保健観察の実施(継続的な医療を確保するための生活状況の見守り、必要な指導等)、ケア会議の実施等の業務を行います(e-らぽ~る心神喪失者等医療観察法についてより)。
根拠法
更生保護法、一部売春防止法に基づく保護観察を行う(5号観察)
主な対象者
少年から成人、高齢者まで全年齢
仕事内容
保護観察所へ配属された場合は、家庭裁判所で保護処分決定を受けた者や、刑事施設から仮釈放された者の保護観察を実施します。そのほかにも、出所後の生活環境の調査や再犯防止に向けた取組みなど、幅広く活動します。
また、地方更生保護委員会へ配属された場合には、刑事施設や少年院へ収容中の者と面接を実施し、施設からの仮釈放や仮退院ができるかを審査する際に必要な調査を行います(キャリアガーデン保護観察官とはより)。
4.地域生活定着支援センター
平成24年度からは、職員数6名に対して、1名が社会福祉士の有資格者です。
全国に一箇所設置されています(北海道のみ二箇所)。
業務内容
矯正施設入所中或いは既に矯正施設を出所した障がい者・高齢者の中には、福祉的な支援を必要とする方たちが少なくありません。
地域生活定着支援センターでは、それら対象者が地域社会の中で円滑に福祉サービス(障がい者手帳の発給、社会福祉施設への入所など)が受けられるよう、保護観察所や関連機関と協働して社会復帰を支援しています(一般社団法人全国地域生活定着支援センター協議会より)。
対象者
支援の対象者は、罪を犯した、あるいは罪に問われた高齢者や障害者で、次の項目に該当する「特別調整」もしくは「一般調整」対象などの方です。
特別調整・・・生活環境調整のうち、高齢(おおむね65歳以上)であり、又は障害を有する入所者等であって、かつ、適当な帰住予定地が確保されていない者を対象として、特別の手続に基づき帰住予定地の確保その他必要な生活環境の整備を行うものをいう。
一般調整・・・生活環境調整のうち、上記、特別調整以外の者。
まとめ
法務省が高齢者・障害者の出所者を受け入れる更生保護施設の福祉スタッフを倍増するなど体制強化を検討している背景は、東京五輪が開催される4年後までに、居場所のない出所者を全体の3割(約2千人)減らす目標を決定し、「世界一安全な日本」を国際社会にアピールする狙いのため。
居場所がないまま釈放された出所者が再犯に至るまでの期間が短いというデータがあります(平成21年の犯罪白書によると、約6割が出所後1年たたずに再び犯罪に手を染めています)。
社会福祉士などの資格を持つ福祉スタッフを配置する「※指定更生保護施設」を現在の57施設から全国の全更生保護施設(103施設)にほぼ倍増する財源を予算で概算要求する方針で、更生保護施設で出所者の自立を支援する非常勤職員1人1日当たり一定額が支給される委託費について、週3日が上限だった支給日数を5日に拡大する方針です。
更生保護のための社会福祉士の活動の幅が広がり、その役割と効果が重要視されています。
※指定更生保護施設・・・出所後直ちに福祉による支援を受けることが困難な者は、一旦更生保護施設において受け入れ、福祉への移行準備及び社会生活に適応するための指導や助言を行うこととなりました。その役割を担うための施設。