社会福祉士、精神保健福祉士試験勉強に取り組む中で、誰もが通る道の一つが「無力感」です。膨大な試験科目、難解な試験用語に向き合うことで、いかに自分が知識不足で思うように事が運ばないものなのかと、分厚い壁を感じることが多々あります。
この「無力感」というものは、試験そのもので留まらずに、福祉の現場に身を投じた後にこそ対峙することになる問題であります。
今回、ケースワーカーの無力感について触れている題材として、漫画『健康で文化的な最低限度の生活』を紹介させていただきます。
7巻のあらすじは、生活保護のケースワーカーとして働く公務員の主人公と同期のケースにスポットが当てられています。
実子をネグレクトしていたシングルマザーの担当になるところから物語が始まり、子ども家庭支援課のケースワーカーとともに、生活保護支給の支援や許可なく入居した住居問題等を少しずつ解決していきます。
そんな中担当していたシングルマザーの妊娠が発覚し、産むべきかどうかを苦悩するケースワーカーの葛藤が描かれています。
個人的にマンガを読んでいてキツイと感じることはそう頻繁にはありませんが、私自身は初めて目にした時に、重くのしかかるものがありました。
なぜこのような感覚に陥ったのかと言うと、私自身と物語に登場するケースワーカーを投影する部分が多々あったからだと思います。
また、ケースワークが思うように進まなかった時、選択に迷った時に投げかけられる子ども家庭支援課の職員の言葉が胸に突き刺さるんですよね。
例えば、支援を優先させるあまりに、心を閉ざすシングルマザーの思いに寄り添えないことに葛藤を覚えあるケースワーカーに対して、
あのお母さん、何を言っても反応がなくて、よくわからないんですよね。自分のことなのに全部役所に任せて。人の話、聞いてるのか、聞いてないのか・・・。
どうしていいかわかんないと、フリーズしちゃうからね、人って。
もしかしたら、私たちの支援のペースが早すぎたのかも。
(省略)
こういう無力感は何度もあるよ。
(省略)
結局私たちは、彼女の「思い」を聞くところまではいけなかったわね。そこまで心を寄せる余裕がこちらにもなかった。
第61話
生活保護のケースワーカーはケースワークと対峙することで、幾度となく無力感を痛感することとなり、その心情描写が刻々と描かれています。
ケースは違えど、福祉職に10年以上携わっている私にとっても、無力感を覚える場面は少なくはなく、答えの見えないモヤモヤに支配される瞬間が幾度となく押し寄せてきます。
私自身、4年経っても解決の糸口が見いだせずに、暗中模索しているケースと対峙している時には、そのような暗澹たる感情に覆われていました。
まず、コミュニケーションを取れないから、相手の考えていることがわからない。
問題行動を起こしてこちらに注目を引きつけようとして、放置しておくと奈落の底に落ちて行くことが目に見えているからこそ、問題から背けることができない。
頭では自分のやっていることがいつか相手の可能性につながる日が来ると納得させようとしても、心が常にザワついてしまい、答えの見えない迷路を彷徨っているかのようで、昇華されずに言いようのない気持ちが交錯しています。
なんて自分は無力なんだと毎日のように感じているところだったので、この物語は自己覚知のように、重圧を感じたのだと思います。
そんな無気力や無力感に苛まれても今までやっていけるのは、「自分一人で背負っているわけではないから」という言葉に尽きます。
同僚や、関係機関と密に情報共有しながら、時には愚痴を(むしろ毎回のように)吐きながらケースと向き合う力を維持できていることを実感しています。
この物語のケースワーカーも、様々な関係者に支えられ、フィードバックやカンファレンスを展開して最良な支援を導きだしています。
今、社会福祉士や精神保健福祉士試験を勉強しているみなさんの中にも、思うように勉強の成果が見られない無気力感や、どれだけ頑張っても結果が出ない無力感に打ちひしがれている方も少なくはないかもしれません。
けれども、この受験時代に味わった敗北感のような己の弱さは合格後の新天地で多かれ少なかれ活かされる瞬間が訪れます。
そこには、敗北から這い上がって、「合格」という結果につなげることができた確かな功績が残っているから。
今無気力感に失望しかけているみなさんは独りではありません。
私も潰れそうになることの連続ですが、こうしてこの記事をご覧になっているみなさんんのことを絶対合格フレンドと思いを馳せることで、パワーに変えて生きています。
一緒にこの山場を乗り越えて行きましょうね。