福祉業界では、社会福祉士・精神保健福祉士試験で問われるような、ただしい答えが一つないし2つだけ存在する世界ではないことは、言わずともみなさんが肌で感じられていると思います。
支援を計画する上で、相手にとって何が正しいのかを常に模索される日々だと思われますが、「誰が正しい答えを判断するか」という点が大きいのではないかと感じています。
方策を進めるにあたって、発言の影響力が強い人間によって、何が正しいかどうかが絞られてしまうという現象が起きがちである業界だということです。
わかりやすく言うと、上司であったり、ベテラン社員であったりして、長年福祉業界に精通している人間や権限を持つ役職の発する支援策は、「正しいと判断されやすい」ということです。
とくに新入社員の方は、そのように感じられる機会も多いかもしれません。
何が正しいかという観点よりも、誰が発言をしたのかによって、物事の方向性が決められてしまい、自分の中では違和感が強くなっていたとしても、「経験者が良うのだから間違いはない」と納得させながら妥協して臨まれている方もおられるかもしれません。
長く生き抜いて行くためには、長いものには巻かれるような生き方や、目をつむるような選択も大切になってきますが、自分の中での違和感が日に日に強くなっているのに目をそむけてしまうと、自分に嘘をついてしまう生き方を進んでしまうことになりますよね。
決して、対立することを推奨しているわけではありません。
ただ、冒頭で述べたように、対人援助の現場では、正しい答えは一つだけではありませんし、生物心理社会モデルという視点があるように、経験だけで判断できるものでもありません。
福祉の現場は、発言力がある人間のみでアプローチを進めて行ったとしたら、クライエントさんも他の職員もどんどん偏った道に進んでいってしまうでしょう。
みなさんが感じている違和感や、自分の持つ視点を否定する必要はありません。
もしかしたら、周りの職員に自分の思う違和感を話してみることで、実は同じように感じられている方もおられるかもしれません。
常にアップデートが求められて、チームアプローチで臨むことが前提の福祉業界ですので、みなさんが抱えている違和感と向き合うことで、クライエントにとって最善の支援策が導き出せるきっかけにつながるかもれません。