福祉業界に20年弱身を投じている私が日々感じている怖さの一つとして、「見て見ぬふり」が挙げられます。
この業界に携わっている方ならば、身にしみて感じた経験がおありかと思われますが、「向き合いすぎると自分が潰れてしまう恐怖」とは対照的な言葉ですよね。
感受性豊かで多感な方ほど、色々な面に気づきやすい世界です。
このまま放置しておいたら、ますます相手が不幸になるのが目に見えているからと、先回りして転ばないように支援策を実行される方もいましたが、自分で全部抱え込もうとするほど、自分も相手も不幸になってしまう結末も多々目にしてきました。
最初から最後まで責任を持って向き合えるならばまだしも、力量不足や都合が悪くなったという点で、手を引いたり、方針を180度転換することで、相手の人生を振り回してしまうリスクがあります。
職員からすれば、数あるケースの一人かもしれませんが、その一人は今後の人生に影響が及んでしまい、心に傷を負ってしまうことになる実例も見てきました。
話は冒頭に戻りますが、見てみぬふりがなぜ怖いのかという点ですが、無関心が重なることで、問題がどんどん積み重なり、ある時取り返しがつかないくらいの重大事件が発生する可能性があるからです。
おかしいと思っていても、関係性があるから口に出せない、指摘することで自分でフォローをする自信がないから目をそむけてしまう。
向き合いすぎることのリスクとは異なり、向き合わずに、放棄することも人生を破滅へと結びつけてしまう選択となる可能性もあるのです。
それは、決してクライエントだけに留まらず、自分自身の心にも置き換えられると思います。
自分の本心を見て見ぬふりすることで、平然を装って日々を過ごしていても、いつの日にか無理がたたって、均衡を保てなくなる日が訪れるかもしれません。
今置かれている世界が全てではない、まずそう気づくことができるかどうかで、その後の選択肢が増えると思います。
このままではいけないというSOSを感じ取っていたら、ぜひ周りに目を向けて、行動に移してみてください。そしてためらわずに、第三者に頼ってみてください。
早ければ早いほど、まだ間に合います。