性風俗の現場支援を行う社会福祉士の役割に続いて、本作では女子大生にスポットを当てて、なぜ彼女たちが性風俗の現場に足を運ぶようになったのかの背景や動機をインタビュー等を通して明らかにしています。
親の教育資金援助に頼れず奨学金返済のために唯一無二の選択として大金を稼げる風俗を選んだ女学生、赤詐欺と呼ばれる男性に騙されて貢ぐために風俗に没頭する女学生、裕福な家庭に育ちながら自分らしさを求めて風俗で居場所を見つけた女学生、更に男性でも体を売って学生生活と両立しているエピソード等、千差万別の実態を知ることで、日本社会が抱えている貧困や格差問題を多々痛感することになります。
「風俗でよかった」なぜ彼女たちは異口同音にそう答えるのか。
日本社会が抱えている深い貧困や格差の問題を考えさせられます。
とりわけ印象深かったのは、昨今社会問題として話題にもなっているブラックバイトの一例として登場する、福祉学科の大学に通いながら2つの介護施設(お泊りデイサービスとグループホーム)でアルバイトをこなしている二十歳の学生のエピソードです。
彼女は週4で夜勤をこなしがら、奨学金返済のために体を犠牲にして働いていますが、身も心も限界のようで、大金を稼げる風俗の道に切り替えることになりました。
将来は女性分野の福祉支援事業に携わることを目的に、社会福祉士を目指しています。
この物語は現実なのかと、あまりにも日常生活とはかけ離れているようでにわかには信じられない方もいるかもしれませんが、貧困や負の連鎖に陥る過程やその後の人生等を追体験することで、対岸の火事ではなくて自分のこととして考えらせられました。
奨学金問題が随所で描かれているため、関連資格のFP技能検定を受検される方や、福祉業界に携わっている方にとっても若者の貧困問題や経済状況を把握するための参考書にもなるでしょう。