2019年創設予定であった国家資格「子ども家庭専門相談員」について、続報が全く出ていないため、一体全体この資格の誕生はどうなったのかと疑問を感じられている方は多いと思われます。
先程ネットを中心に最新情報をリサーチしましたが、あと二ヶ月あまりで2019年に入るというのに、現実味をおびたような情報は見当たりませんでした。
今年の7月に日本社会福祉士会が表明した「児童福祉に関する国家資格を創設するという報道についての声明 」を読む限り、社会福祉士と精神保健福祉士の専門性を深め、より充足化させることを強調しており、新たな児童福祉の国家資格化は保留になっているのではないかと想像させられました。
「児童福祉に関する国家資格を創設するという報道についての声明 」
6 月 18 日の福祉新聞の記事によると、6 月 13 日に開かれた「児童の養護と未来を考える議員連盟」(塩崎恭久会長)の緊急会合において、塩崎会長は「今は、児童の専門でなくても、社会福祉士なら(児童福祉司に)なることができる。児童の問題について専門性のある国家資格をつくった方がいいのではないか」と発言されたとのことです。
この新たな国家資格の創設について、あらためて私たちの見解を以下に述べます。
(中略)
私たちとしても児童福祉司の専門性の向上が必要であることは認識しています。そのための方法として、ソーシャルワーク専門職である社会福祉士や精神保健福祉士の国家資格を積極的に活用し、これらのソーシャルワーカー資格の所持を児童福祉司の任用要件とすべきであると考えております。
「子ども虐待対応の手引き」(平成 25 年 8 月 23 日雇児総発 0823 第 1 号厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長通知にて改正)において、児童虐待の要因には、
①保護者側のリスク要因、
②子ども側のリスク要因、
③養育環境のリスク要因、
④その他の要因がある
と分類しています。
複雑で不安定な家庭環境や家族関係、夫婦関係、社会的孤立や経済的な不安、母子の健康保持・増進に努めないことなど家庭における貧困や社会関係の困難や地域生活課題があり、子ども家庭福祉を担う専門職には、これらのリスクの分析をはじめ、子どもや家庭を取り巻く広範囲な課題を分析し、積極的に介入していくことができる専門的な力量が必要です。
社会福祉士や精神保健福祉士は、このような幅広い問題に対応する知識、技術を持ち、問題解決に向けて介入する専門職です。
今求められることは、新たに国家資格を創設することではなく、社会福祉士や精神保健福祉士の効果的・効率的な活用を促進し、専門的知識や技術の向上に必要な研修を充実することであると言えます。
(中略)
2018 年 3 月に取りまとめられた「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められている役割等について」(社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会)では、社会福祉士が担う今後の主な役割として、「『地域共生社会』の実現に向けて、
①複合化・複雑化した課題を受け止める多機関の協働による包括的な相談支援体制や
②地域住民等が主体的に地域課題を把握して解決を試みる体制の構築」を挙げており、そのために今後、養成カリキュラム等の見直しを検討すべき、としています。
今年 3 月に目黒区で起きた児童虐待のような、痛ましい事件は後を絶ちません。
子どもが虐待により死に至るといった事件を無くすためには時間的な猶予はありません。
これから新しい国家資格を創設しその養成等に取り組むよりも、可及的速やかに養成カリキュラムや研修の充実による社会福祉士及び精神保健福祉士の実践能力の向上と活用の促進を図り、さらには、これらのソーシャルワーカーが、専門性を活かしながら積極的に介入することができる環境を整備し、子どもたちが子どもらしく生活する権利を守っていくことが必要であると考えます。
2018 年7月5日
公益社団法人日本社会福祉士会 会長 西島 善久
公益社団法人日本医療社会福祉協会 会長 早坂 由美子
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 岡本 民夫
一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟 会長 白澤 政和
【引用元】
https://www.jacsw.or.jp/05_seisakuteigen/files/018/0180705.pdf
第31回社会福祉士試験及び第21回精神保健福祉士試験内容にも、地域共生社会や児童虐待問題についての出題が用意されることが想定されますので、要チェックです。