今回は、国家資格キャリアコンサルタント試験の実技面接試験「相談者が二者択一の悩みを抱えていた場合の対応」についてです。
仮に、「就職しようか」、「現職に留まろうか」という二つの選択を迷っているという状況だとします。
別記事でも扱いましたが、相談者のこのような悩みに対して、絶対的な正解は存在しませんが、これだけは避けた方が良い態度があります。
それは、CCが答えを提示する、どちらかを主観で選んで回答するという対応です。
そんな当たり前なことはしないよと、鼻で笑いたくなるような方もおられるでしょうが、思いやりのある方ほど、「助けてください」「どう思いますか?」というようなCCに救いを求めるようなリアクションを求められると、つい応じたくなるような衝動に駆られるかもしれません。
「私のこの答えに対してどう思うのか?」と振られた際に、自分の意見を伝えることが悪いということではありません。
なぜ相談者がそのような質問を投げかけてくるのか、背景に何があるのかという視点を持つことが大事ではないかと思っています。
相談者が現職に留まるか、それとも転職をした方が良いのかと迷っている場合、その判断についてCCに尋ねてきたら、以下のような可能性が考えられます。
1.自分で決められずに、客観的な意見が欲しい。
2.実はどちらにしようか答えは出ているが、何らかの事情があって、どうしようか決めかねている。
1についてはそのままですが、そもそも辞める、続けるの二択について自分では決めきれずにいるので、専門家であるキャリアコンサルタントに助言が欲しいというパターンです。
2については、言葉に出していないものの、現職に留まる又は転職するという選択を描いている自分の中で、どちらに比重を置いているのか既に決めている場合です。
それが実行できない何らかの障害があり、決断ができずにいるようなシチュエーションが想定できます。
例えば、転職をするにしても、希望に合った会社がないので踏みとどまっている。本当は今の仕事を続けたいけれども、会社が存続できるのかの将来性が不安であるというような状況です。
そのような事情をCCに明かしていない、または隠しているという場合があります。
考えられる要因として、初対面のCCに対して、十分に信頼関係を築けていないため、否定されるのかが怖かったり、いきなり本音を明かさずに、CCの出方をうかがっているのかもしれません。
相談者自身の自己開示や気づきが十分ではない状況、「転職しようか、現職に留まろうか迷っている」という言葉だけをうのみにすると、真の問題は何かについて把握できなくなる可能性があります。
あるいは、キャリコンシーオー津田先生の動画のように、デメリットとメリットについて比較して考えてもらおうとするようなアプローチを試みたくなるかもしれません。
津田先生がサムネに書かれているように、面接試験では、どちらにしようかと決断させるために、舵を切ることが重要ではないということです。
なぜそのような悩みを持っているのかの背景を把握するように努めること、つまり相談者の抱えている問題把握に焦点を当てることで、見えてくるものがあります。
1にしても、2にしても、相談者自身が悩みの矛盾やベストな方法に気づいていないという場合もあります。
例えば、転職したいけれども、情報収集をほとんどしていない。どこの業界に絞れていないというようなそもそも論の段階です。
その背景には、「認知の問題(思い込み)」「自己理解不足」「仕事理解不足」「コミュニケーション不足」といった頻出キーワードの何があてはまるのか、相談者自身の語りを通して俯瞰して理解していくことが重要です。
相談者が意図的に話していないにしても、気づいていないにしても、上手く関係性を構築できていくと、相談者自身が内省する過程で、CC側が何かしらを感じ取れるようになれるはずです。
もしかしたら、就職、転職以外で、ボランティアや資格取得等の啓発的な第三の選択のニーズや思いについて新しく見えてくるなんてこともあり得ます。
そのためには、CC側の解決思考アプローチよりも、傾聴に徹して気づきを促すという来談者中心アプローチが基本となるわけです。